真夜中鳴り響く電話のベル。
一本の線が繋ぐ無数の眠れぬ夜。
3回待って受話器を取った。
「もしもし。起きてた?」
「ん。どうした?」
「ううん。何でもない」
「元気だった?」
「お陰様でね」
始まりはいつもこんな感じだ。
他愛もない言葉が行き交い、時が流れていく。
聞き出せない真相を少し巡らせながら、
ありきたりの話題がいつもの会話になっている。
「そろそろ眠たくなったね」
気がつけば時計の針は日付をまたいでいる。
「なんか安心した」
「またね」
そう言って電話が切れた。
一方的にも思える突然の訪問者は、
抱えきれない荷物を引きずりながら、
立ち寄った安らぎになにか求めるでもなく去っていく。
声を聞けば安心するのなら易いものだ。
そう思えた頃の話。
では、「またね」
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