2019年11月7日木曜日

太陽と北風

旅人が歩いている。そんなシチュエーションで始まる物語を思い浮かべる季節になった。夜はひんやりと肌を撫でるような冷気を感じ、陽の当たる日中は上着を羽織るのを忘れさせる暖かさだ。
昼夜逆転の生活が長ければ、どちらの時間帯も生活の中心となり得る。時間差の変化を考えながら行動することが必然になるものだ。

辺りが静まり返る程の時間帯がこの辺は早い。
華麗な装いの目映さを散りばめている世界とは、かけ離れたスピードで夜を迎えている。地上の薄暗い風景を照らす星の輝きがそれを教えてくれる。都会は星が見えないというが、見えないのではなく空を見上げる事を忘れるほどの誘惑に満ちているのだ。空気もどこか違うのは、車の排気ガスや工場の煙などではなく、多くの溜め息を飲み込んでしまう息苦しさなのかもしれない。

旅人は歩き続ける。旅人である以上留まることがない。
砂漠を抜けオアシスに辿り着いても、また次の地へ歩き出す。目的は何なのかを探すため。迷いながら。
太陽も北風も通過点の出来事。
物語の結末より先にある目標を目指して歩き続ける。

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