2018年6月2日土曜日

冷たい雨 届けたい言葉 真夜中

梅雨のこの時期で思い出される事。
まだケイタイなんて無くって、家の電話か公衆電話の時代の話。

いつものように電話のベルが鳴る。
あの頃は、毎晩誰かと繋がっていた。
何気無い世間話や悩み相談。
大喜利みたいに笑い話を延々となんて事もあった。
けれどその日は違ってたんだ。

少し強めの雨が降る夜。
いつもは自宅から電話してくる友達が、何故か外から掛けてきた。
雨音が受話器の向こうから伝わってくる程の強さで、
心配事をあまりにも簡単に予感させてしまうぐらいに聞こえてくる。

あの明るさも弾んだ声も、
雨のせいじゃない出来事に奪われて、
行き場を失った先に選んだのはこのダイアルだったんだね。

濡れた身体が冷えきって、震える言葉も疎らになっていく。
生きる気力さえどこかに捨て去ろうとしてしまうほどに。

沈黙が不安に変わる。
リアルな距離が戸惑いに拍車をかける。
「後で行くから」
思いがけず出た言葉を最後に電話を切った。
雨はまだ止まない真夜中に、何か伝えたくて車で走り出す。

時計の針が日付をまたぐ頃、
声にならない君の涙が、
言葉足らずの自分の精一杯の慰めが、
全てを洗い流すようにただ、
降り頻るガレージにこだまする。



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