決して忘れない。
そう誓ったあの頃の思いは、痛みが薄れてゆくようにぼやけてしまった。
ただ傷跡が残像のように瞼をかすめるのは何故だろう。
その答えを見出だせないまま、随分と時が経ってしまったようだ。
鮮明に映るのはあの瞬間。
全てを失うであろう出来事の始まりと終わり。
語り尽くせないほどの感情を押し殺してもがいていた。
選ぶべき道を間違えたというのなら、すれ違うことも出来たのに。
進むべき道を間違えたというのなら、振り返ることも出来たのにと。
柔らかい言葉で包む情は受け入れがたく流れていき、形を成すことさえ出来なかった。
それを受け止める器も脆く、儚いものだけで溢れ落ちる現実を受け止められずにいた。
時を止められる筈もなく、過ぎ去ったあの頃を時々思えば苦しい。
交わることのない筈の時間がクロスする。
今を生きることの意味と、今に繋がる過去の記憶がぶつかり合う。
結論のない言い訳を投げ掛けても、報われない記憶の重みを感じるだけ。
それがいつまで続くのか。
果てなき日々の断片が許しを求めている。
決してこの先も交わることなき人であれど、消えない記憶がある。
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