優しい季節が訪れる。
少し先を歩く君が振り返りざまに微笑んだ。
「ねえ何か言ってよ」
小さな声でそう言った。
「ん?」
戸惑う瞬間と重なる表情。
何を求めているのか考えている。
歩きながら。
立ち止まる君と距離が近づく。
見上げるようなしぐさで見つめている。
「どうした?」
聞き返す自分。
正解が分からないから疑問を投げ掛けた。
君はまた少し前を歩き出して立ち止まった。
「私のことどう思う」
背中越しの問いかけだった。
そういうことか。
愚問のようでもあり、改めて聞きたかったのだろうと感じた。
少し深呼吸をして言葉を選ぶ。
「勿論・・・」
その言葉の続きを発する前に君が振り返る。
「知ってるよ」
君の言葉が重なる。
そしてまた微笑んだ。
風が心地よい季節の出来事だった。
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