2019年8月29日木曜日

夜明けが来る前に

都会の片隅。
忘れ去られたような空間。
人通りも疎らに見える。
大通りの2つ先に消え行く灯り。
楽しい時間はいつも瞬き程の早さで過ぎていく。

「またね」と交わした約束。
細い糸ほどの繋がりでも紡ぎ続けられたなら。
そう思い繰り返した夜間飛行。
翼など無いのにフワリと浮かび上がる感覚が、自分を幻想へと誘う。

重い扉が静かに閉じてこの場所に辿り着くまで、余韻を少しずつ噛みしめていた。
さっきまでの自分と嘘のように沈黙する自分。
どちらの自分も冷静にあるようにと言い聞かせる。
タクシーの列が通りに溢れている。
手を挙げずとも自然な流れのように乗り込む人達がいる。
小さな空間に閉じ籠り、ひたすら朝が来るのを待っている自分には、羨ましくさえ思える光景。
少し眠ろう。
時折ライトの灯りが射し込み、クラクションが遠吠えのように響く中、現実へ引き戻されるジレンマと闘いながら目を閉じた。

優しい言葉がこだまする。
そのひとときの安らぎが夜明け前の薄明かりに溶けていく。

0 件のコメント:

コメントを投稿