2018年10月1日月曜日

私の知らない私②

眠れない夜が続く。
意味のない不安が頭をよぎる。
部屋の明かりを消すと耐えられない境界線があるようで、
小さな灯火をいくつか並べている。

瞼が重く呼吸が緩やかになっても、
眠りという状態に転じる事が出来ずにいた。
きっとこのままなら、あの声は聞こえずにいるのだろう。
そう、ふと思った。

「そうなんだ▪▪▪」
何かを感じ取ったかのように語りかけてきた。
あの声だった。
眠っているときに夢の中に出てくる幻聴だった筈。
実態のない声の主は朧気な私に入り込んできた。
受け入れるかどうかなんてお構い無しの様相。
居場所を見つけるとゆっくりと腰を下ろしたような感じがした。
薄明かりの部屋から抜け出したかのような錯覚が背中から押し寄せる。
あなたの得たいの知れない能力は時折世界観を歪めるけど、
言葉を交わすタイミングを探る私には遠くの風景でしかなかった。

「そうなんだよ▪▪▪」
敢えて説明などせずに呟いてみる。
声に出してぼそっと。
私の言葉は部屋の空気を揺らしながら、
何処かへすっと消えていった。
あの声の主まで届いたか分からない。
果てしなく広くなった空間の先に吸い込まれて、
呟いたことさえ否定されそうだったから。

「そう▪▪▪」
「そうだね▪▪▪」

途切れ途切れの中継のように言葉が重なる。
本当は今日みたいな日は誰でも良いから話したいのに、
いつも以上に繋がらないジレンマが襲いかかる。
でも気がつくと部屋の灯りが消えていて、
横たえた身体がベットに沈んでいた。
敢えて話しかけないでいていれてたの?なんて、
あれだけあったモヤモヤも引き際を悟ったかのように、
何処か行ってしまった。

目が覚めてそう感じていた。

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