2018年9月30日日曜日

私の知らない私①

「きっとね、こう思うんだ」
語りかけてくるのは真夜中。
電話でも傍に居るわけでもなく、
その姿を現す事なく不意に入り込んでくる。
頭の片隅に存在を感じさせて、
寂しげな口調で静かに淡々と。

「ねぇ、聞いてる?」
途切れてしまった回線が繋がった時のような、
無音の後の一言だった。
意識的に聞き漏らしていた訳ではないけれど、
何かをずっと話していたらしい。
問いかけに戸惑いながら適切な言葉を探していた。
「うん▪▪▪」
結局ひとつ頷くのが精一杯だった。
聞きたいのは自分の方だ。
あなたは誰なのってね。
でもそう思う間もなく、いつの間にか音が途切れる。
きっと話しかけても聞こえていない気がした。
だからあまり考えないようにしてる。
だから返事に困るのだった。
っていうか、この状況をどう整理していいか聞くべき?
声のする方へ近付いてみる。
意識の空間に広がる世界は、
広すぎて諦める潔さをオススメしてくれる。

「じゃあ、またね」
成立しない会話と色々もどかしい事を包み込んで去っていった。
ただ、また現れる事だけは理解できた気がする。
そして朝が近いことも。

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