2018年10月5日金曜日

私の知らない私④

朝が来た。
いつものように。
眠りについて目が覚めたときが朝だというのなら、
窓の外の景色が眩しくても、薄暗く闇を纏っていても構わない。
自然と体が迎えてくれる始まりの、何とも比喩しがたい微睡み。
回らない頭を掻き撫でながら、お決まりの居場所を後にする。

香り高き珈琲を抽出しながら、自分の朝を認識してみる。
カーテンの外とは別世界の部屋を見渡して、
覗き込んだ鏡に写る私と無言の挨拶を交わした。
昨日と決別した筈の境界線が曖昧になってしまわないように消し去った記憶。
取り戻したい思いなんてあってはならないと決め込んで、
リセットするだけのシャワーの飛沫がすり抜けていく。

雨の音が強くなって、静かなだけの部屋を騒つかせていた。
時間を報せる物も無い空間にはモノトーンのような音の広がりだった。
溜め息をひとつついた。
いつのも事だ。

白紙の今日にどんな色が重なろうとも、
終わりを告げて眠りにつけば次の朝に繋がるだけ。

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