翼など持たない生き物なのに、
いつかは飛べると信じていた。
ふわりと身体が軽くなって、
どこまでも自由に行ける気がした。
ルールやモラルが鎖となって、
地面に呑み込まれるほど重く感じる。
夢はやがて固く結んだ口の奥にしまって、
眠りを妨げる理不尽なムービーを写し出す。
鮮やかに舞え。
責任感は拭えなくても。
しなやかに舞え。
無関心の悪戯を掻い潜れ。
氷の溶ける音がした。
グラスで弾ける泡の音。
アナログのノイズが揺らぎ、
ノスタルジックな時間が通り過ぎる。
鮮やかに舞え。
焦燥感は拭えなくても。
しなやかに舞え。
噂話の悪戯を掻い潜れ。
翼があっても飛べないのなら、
見上げた空を否定しよう。
翼が無くても飛べたとしても、
空の存在に気がつかないまま。
緩やかに舞え。
ただひたすらに舞え。
浮き上がった身体が流れるように。
灯りが消えたあの通りで、
自由な猫と風と遠くのサイレンと共に。
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