2018年9月30日日曜日

私の知らない私①

「きっとね、こう思うんだ」
語りかけてくるのは真夜中。
電話でも傍に居るわけでもなく、
その姿を現す事なく不意に入り込んでくる。
頭の片隅に存在を感じさせて、
寂しげな口調で静かに淡々と。

「ねぇ、聞いてる?」
途切れてしまった回線が繋がった時のような、
無音の後の一言だった。
意識的に聞き漏らしていた訳ではないけれど、
何かをずっと話していたらしい。
問いかけに戸惑いながら適切な言葉を探していた。
「うん▪▪▪」
結局ひとつ頷くのが精一杯だった。
聞きたいのは自分の方だ。
あなたは誰なのってね。
でもそう思う間もなく、いつの間にか音が途切れる。
きっと話しかけても聞こえていない気がした。
だからあまり考えないようにしてる。
だから返事に困るのだった。
っていうか、この状況をどう整理していいか聞くべき?
声のする方へ近付いてみる。
意識の空間に広がる世界は、
広すぎて諦める潔さをオススメしてくれる。

「じゃあ、またね」
成立しない会話と色々もどかしい事を包み込んで去っていった。
ただ、また現れる事だけは理解できた気がする。
そして朝が近いことも。

次なる嵐は夜を越えて

刻々と近づく。
危機感の無さを嘲笑うように進路を定めて。
誰にも止められない勢力が狙いをつけるかのように。
じわりじわりとやってくる。

過ぎ去りし日々の跡を消し去るように、
奪いながら通り過ぎていく。

無力であろう私は膝を抱えて、
ひたすら耐えて静けさを待つ。

その先の世界を見るために。


2018年9月26日水曜日

鮮やかに舞え

翼など持たない生き物なのに、
いつかは飛べると信じていた。
ふわりと身体が軽くなって、
どこまでも自由に行ける気がした。
ルールやモラルが鎖となって、
地面に呑み込まれるほど重く感じる。

夢はやがて固く結んだ口の奥にしまって、
眠りを妨げる理不尽なムービーを写し出す。

鮮やかに舞え。
責任感は拭えなくても。
しなやかに舞え。
無関心の悪戯を掻い潜れ。

氷の溶ける音がした。
グラスで弾ける泡の音。
アナログのノイズが揺らぎ、
ノスタルジックな時間が通り過ぎる。

鮮やかに舞え。
焦燥感は拭えなくても。
しなやかに舞え。
噂話の悪戯を掻い潜れ。

翼があっても飛べないのなら、
見上げた空を否定しよう。

翼が無くても飛べたとしても、
空の存在に気がつかないまま。

緩やかに舞え。
ただひたすらに舞え。
浮き上がった身体が流れるように。
灯りが消えたあの通りで、
自由な猫と風と遠くのサイレンと共に。

2018年9月21日金曜日

指先と恋

何年ぶりだろうか。
その人の観察力を誉めるべきか?
素晴らしいと思う。

指先の変化など気付く筈もない薄明かり。
人を見ることに長けている片鱗をみた。

意外にそういった部分に蓋をして恋をして来たのかもしれないと思う。

勝手な想像だが、そう感じ取った。

大事なものを見つけるには苦難も必要だろう。
余計なことは言わずに、そっと見送るよ。

あなたが得るであろう幸せは、
貴方だけのモノだから。


Sea

波が押し寄せる。
静かに。
少しずつ。

浅瀬の優しい波打ち際。
返す波の力に気を取られる。

思いも依らない出来事から遠ざかるように、
あの場所へ向かっていた。

深い闇の狭間を包む光の森。

扉の向こう側に身を委ねる。

何も知らずに語りかけてくる風のように、
すり抜けていく感じが嬉しかった。

僅かでも、
この時この場所が癒しであるならば、
祈りのような付加実な幻想よりも遥かに尊い。

切なく。
切なく。
果てしなく。

大きな波が来ても大丈夫だよ。

ありがとう。

2018年9月17日月曜日

Repeat

何度でも見返してしまう映画がある。
時間のないときはあるだけの時間を費やして。
継ぎ接ぎの記憶でも刷り込まれた画が浮かぶ。
渇きに水を差し込むように見ている。
やがて呼吸となり、鼓動となる。
根源のような安らぎ。

相反してかどうかはわからないが、
刺激的な世界の一片がこぼれ落ちた。
真相は虚像に隠れて掴めないが、
真っ向から伝わる言葉が清々しくあった。
直に踏み入れていない場所の騒動が、
現実の足元の弛みを忘れさせてくれそうだった。
人知れず感謝と言ったところか。
語るべきではない真実など、
よっぽどの悪か、正体を隠す英雄にしか似合わない。
周りで戯れ言を沸かせる愚民と相容れない強さ。
孤独を知っているのか。
仲間に恵まれているのか。
見知らぬ人の行く末を案じてみた。

心に余裕があるようだ。
まだまだやらなければならない。

少し疲れたらまた見よう。

2018年9月11日火曜日

夜更けから夜明けへ

前の投稿から半月以上経過してしまった。
正直誰も見ていないブログだから放置していても構わないのかも知れないけれど。
何処か捨てきれない望みがあるようで、静まり返ったこの場所を眺めていた。

事情が変わった。
▪▪▪としか言えないが、夜のない生活に身を投じている。
待ったなしの決断と重圧が怒濤のように降りかかる。
自前の瞬発力が困難を振り切ろうと加速する。
限界はすでに越えているのかも知れないが、微塵も感じさせない気力がまだ残っている。
強気にいかなければ崩壊は目前にあるからだ。

これまで何度も乗り越えてきた。
苦難の日々は修練にも似て、積み上げては崩す作業でしかない。
痛みなど麻痺している。
感情的になるのはきっとかなり先だ。
周りの心配を余所に突き進む。

今やらなければいけないことをただこなすだけ。
機械のように正確に、人工知能のように無機質に。